『ローマの休日』は、1953年公開のアメリカ映画です。監督はウィリアム・ワイラー、主演はオードリー・ヘプバーンとグレゴリー・ペック。ヨーロッパのある国の王女アンと、アメリカ人の新聞記者ジョーが、ローマで過ごすたった一日を描いた白黒の恋愛映画です。
この記事では、『ローマの休日』のあらすじをネタバレなしで紹介したあと、結末と最後の記者会見の場面の意味を解説します。ロケ地や、脚本にまつわるエピソードもまとめました。
2026年10月時点では、U-NEXT・Huluの見放題と、Amazonプライム・ビデオのプライム会員特典で観られます。
ローマの休日はどんな映画?【ネタバレなし】
作品の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開年 | 1953年(日本1954年) |
| 製作国 | アメリカ(白黒) |
| 監督 | ウィリアム・ワイラー |
| 原案 | ダルトン・トランボ |
| 脚本 | イアン・マクレラン・ハンター、ジョン・ダイトン(のちにダルトン・トランボのクレジットも回復) |
| 主なキャスト(役名) | オードリー・ヘプバーン(アン王女)、グレゴリー・ペック(ジョー・ブラッドレー)、エディ・アルバート(アーヴィング・ラドヴィッチ) |
| 上映時間 | 118分 |
| 主な受賞 | アカデミー賞 主演女優賞(オードリー・ヘプバーン)・衣裳デザイン賞(白黒)・原案賞の3部門受賞(10部門ノミネート) |
『ローマの休日』は、第26回アカデミー賞で10部門にノミネートされ、オードリー・ヘプバーンの主演女優賞など3部門を受賞しました(アカデミー賞公式)。1999年には、アメリカ議会図書館が文化的・歴史的に重要な映画を保存する「国立フィルム登録簿」にも選ばれています(アメリカ議会図書館)。
あらすじ(ネタバレなし)
『ローマの休日』は、窮屈な毎日から抜け出した王女が、ローマの街で自由な一日を過ごす物語です。
ヨーロッパのある国の王女アンは、各国を回る親善旅行の途中で、ローマに滞在しています。分刻みの公務と堅苦しい作法にすっかり疲れてしまったアンは、ある夜、こっそり宿泊先を抜け出します。
ところが、鎮静剤が効いてきて、アンは道ばたで眠り込んでしまいます。そんな彼女を拾ったのが、アメリカ人の新聞記者ジョーでした。
翌朝、相手が王女だと気づいたジョーは、正体に気づかないふりをしたまま、「王女の休日」を独占記事にしようと考えます。そしてカメラマンの友人アーヴィングと組んで、アンのローマ案内を買って出ます。髪を短く切り、街を歩き、スクーターで走り回る一日の中で、二人の気持ちは少しずつ変わっていきます。
見どころ
1つ目の見どころは、オードリー・ヘプバーンです。本作はヘプバーンにとって、アメリカ映画のデビュー作であり、初めての主演作でした。ワイラー監督は、ブロードウェイの舞台に出ていた彼女のために、撮影の開始を約6か月延ばしたとされています(AFI Catalog)。そしてヘプバーンは、この役でアカデミー賞の主演女優賞を受賞しました。
2つ目は、ローマの街並みです。『ローマの休日』は、全編がイタリア・ローマで撮影され、ハリウッド映画として初めてイタリアで撮影・現像された作品とされています。真実の口、トレヴィの泉、スペイン広場、コロッセオなど、ローマの名所が次々と登場し、観ているだけで旅行をしている気分になれます。
3つ目は、王女と新聞記者という、立場の違う二人の関係です。はじめは特ダネのために近づいたジョーと、正体を隠して自由を楽しむアン。お互いに本当のことを言えないまま過ごす一日が、少しずつ特別な時間に変わっていきます。私は、70年以上前の映画とは思えないほど、二人の会話やしぐさが自然で、今観ても古さを感じませんでした。
白黒映画に慣れていない人にも、最初の1本としておすすめできる作品です。
ローマの休日はどこで見れる?
『ローマの休日』は、2026年10月時点で、U-NEXTとHuluの見放題、Amazonプライム・ビデオのプライム会員特典で観られます。
| サービス | 配信 | 月額(税込) | 無料体験 |
|---|---|---|---|
| U-NEXT | 見放題(字幕・吹替) | 2,189円 | 31日間 |
| Hulu | 見放題(字幕・吹替) | 公式サイトで確認 | 公式サイトで確認 |
| Amazonプライム・ビデオ | 見放題(プライム会員特典) | 600円(Amazonプライム会費) | 30日間 |
| Netflix | 配信なし | ― | ― |
U-NEXTは2026年10月25日、そのほかは2026年10月24日時点の情報です。最新の配信状況は各サービスの公式サイトでご確認ください。
U-NEXTでは、字幕版と吹替版のどちらも見放題で観られます(U-NEXTの作品ページ)。Huluでも、字幕・吹替とも見放題です(Huluの作品ページ)。Amazonプライム・ビデオでは、プライム会員特典で観られます(Amazonプライム・ビデオの作品ページ)。すでにプライム会員の人は、追加料金なしで観られるAmazonプライム・ビデオがいちばん手軽です。
ここから先は、結末までのネタバレを含みます。まだ観ていない人は注意してください。
ローマの休日の結末をネタバレ解説
結末までのあらすじ(ネタバレあり)
ローマを巡る一日の終わり、二人は船の上で開かれたダンスパーティーに出かけます。そこへ、王女を連れ戻しに来た情報部員たちが現れ、乱闘になります。二人は川に飛び込んで、なんとか逃げ切ります。
ジョーの部屋に戻り、ぬれた服を乾かしながら、二人は互いの気持ちを確かめ合い、キスを交わします。
しかしアンは、王女としての立場と務めを受け入れ、ジョーと別れて、滞在先の大使館へ戻っていきます。
ジョーは、王女の一日を独占記事にすることをやめます。編集長が約束していた5,000ドルの報酬も手放し、記事を書かないことを選んだのです。
予定を変えて開かれた王女の記者会見には、記者たちに交じって、ジョーとアーヴィングの姿がありました。訪れた都市の中で一番印象に残った場所を聞かれたアンは、「ローマです。何といってもローマ」と答えます。会見のあと、アーヴィングは、こっそり撮っていた写真を売らずに、記念として王女に手渡します。
最後の記者会見の意味・考察
記者会見の場面で、アンとジョーは、王女と記者という立場のまま向き合います。二人とも、昨日のことを口に出すことはできません。それでも、アンの「ローマです」という答えや、手渡された写真を通して、二人だけに分かる思いが交わされます。
会見が終わると、ジョーはほかの記者たちと一緒に王女を見送り、ひとり静かに会場を去っていきます。二人のその後は描かれません。
このラストは、二人が結ばれない切ない結末です。けれども私は、それぞれが自分の立場に戻ることを選んだからこそ、ローマでの一日がかけがえのない思い出として残るのだと感じました。アンは王女として成長し、ジョーは記者としての誠実さを選びました。互いを思うからこそ、記事にも、売り物の写真にもしなかった一日。だからこそ、この映画は70年以上たった今も、多くの人の心に残り続けているのだと思います。
ローマの休日の制作秘話
ローマの休日のロケ撮影はどう行われた?
『ローマの休日』の撮影は、1952年6月から10月にかけて、ローマの街とチネチッタ撮影所で行われました(AFI Catalog)。
TCM(ターナー・クラシック・ムービーズ)の記事によると、ワイラー監督は、当時のローマには自動車がほとんどなくベスパばかりで、どの場面でも撮影場所の候補が6か所はあり、しかもどれも素晴らしかった、という趣旨を語っています。エディ・アルバートも、ローマでの撮影は楽しいばかりだったと振り返っています(TCM「Roman Holiday: Behind the Camera」)。
作品が白黒なのは、ワイラー監督がカラーに切り替えようとしたものの、現場の事情でかなわなかったためだとされています。ただし同じ記事は、パラマウントの予算の制約が理由だとする説も併記していて、はっきりした結論は出ていません。
オードリー・ヘプバーンのスクリーンテスト
ヘプバーンの起用には、ロンドンで撮られたスクリーンテストが大きく関わりました。BFI(英国映画協会)のアーカイブ記事によると、テストを撮ったのは監督のソーロルド・ディキンソンで、ワイラーの依頼を受けて1951年9月にパインウッド撮影所で行われました。
ワイラーは、台本の場面だけでなく、演技をしていないときの彼女の雰囲気も見たいと頼んだそうです。そこでディキンソンは、第二次大戦中のオランダでの体験を彼女が語るインタビューも撮影しました。ワイラーは1951年10月26日付の手紙で、彼女の人柄と魅力、そして才能がよく分かる、ここしばらく観た中でも最高のテストだったという趣旨を書いています(BFI「The letter that made Audrey Hepburn a star」)。
本作がアメリカ映画の初出演・初主演となったヘプバーンは、この役でアカデミー賞の主演女優賞を受賞しました。
「真実の口」の場面は誰の思いつき?
ジョーが真実の口に手を入れ、手が食いちぎられたふりをする場面は、作品を代表する名場面のひとつです。このアイデアの出どころについては、2人の話が食い違っています。
TCMの記事によると、ワイラーは、ローマで娘たちを連れて観光したときに同じいたずらをして楽しませたのが元になった、と語っていました。一方、グレゴリー・ペックは、古い喜劇のネタとして自分がワイラーに提案した、と話しています。どちらが先かは、この記事の範囲では決着がつきません。
ダルトン・トランボの名前が戻るまで
原案を書いたダルトン・トランボは、赤狩りでブラックリストに載り、自分の名前では仕事ができませんでした。そこで友人のイアン・マクレラン・ハンターが名義を貸し、作品のクレジットにも、授賞式の原案賞にも、ハンターの名前が使われました。
TCMの記事によると、企画をワイラーが引き継いだあと、トランボは脚本に直接かかわっていません。
名前が戻るまでには長い時間がかかりました。AFI Catalogによると、アカデミーは記録をトランボに改め、1993年にトランボの未亡人へオスカー像が贈られました。その後、全米脚本家組合(WGA)が2011年12月に作品のクレジットの回復を決め、現在のクレジットは「脚本:ダルトン・トランボ、イアン・マクレラン・ハンター/原案:ダルトン・トランボ」とされています(TheWrap)。
名前を隠して書かれた物語が、70年たった今も残っているのは、この映画のもうひとつの物語だと思います。
ローマの休日のよくある疑問
ローマの休日は実話?
『ローマの休日』が実話をもとにした作品だという資料は見つかりませんでした。原案は、脚本家ダルトン・トランボのオリジナルストーリーで、原作となる小説もありません(AFI Catalog)。
ロケ地はどこ?
『ローマの休日』は、全編がイタリア・ローマで撮影されました。ロケ地としてよく知られているのは、次のような場所です。
- 真実の口
- パンテオン
- トレヴィの泉
- スペイン広場
- コロッセオ
- マルグッタ通り51番地(ジョーのアパート)
今もローマの観光名所として人気の場所ばかりなので、ローマ旅行の前に観ておくと、旅がいっそう楽しくなります。
脚本家の名前が隠されていたって本当?
原案を書いたダルトン・トランボは、当時、アメリカの「赤狩り」でハリウッドのブラックリストに載っていたため、自分の名前で仕事ができませんでした。そこで、友人の脚本家イアン・マクレラン・ハンターが名前を貸し、アカデミー賞の原案賞もハンターの名前で受賞しました。
のちにアカデミーの記録はトランボの名前に改められました。名前が正式に戻るまでの経緯は、ひとつ前の「ローマの休日の制作秘話」で紹介しています。
吹き替え版はある?
『ローマの休日』には、いくつかの日本語吹き替え版があります。
- テレビ朝日「日曜洋画劇場」で1979年に初放送された版: アン王女=池田昌子さん、ジョー=城達也さん、理容師マリオ=広川太一郎さん。放送時にカットされた約20分は1994年制作のソフト版の音声で補い、2024年4月5日から「日本公開70周年 4Kレストア 日本語吹替版」として劇場上映されました(MovieWalker Press)
- 日本テレビ「金曜ロードショー」で2022年5月13日に放送された新録版: アン王女=早見沙織さん、ジョー=浪川大輔さん、アーヴィング=関智一さん(ファミ通.com)
配信サービスで観られる吹替版がどの版かは、サービスによって異なる可能性があります。
まとめ
『ローマの休日』は、窮屈な毎日から抜け出した王女アンと、新聞記者ジョーが、ローマで過ごすたった一日を描いた作品です。オードリー・ヘプバーンの輝くような魅力、ローマの美しい街並み、そして記者会見で終わる切なくも温かいラストが、この映画の大きな魅力です。
2026年10月時点では、U-NEXT・Huluの見放題と、Amazonプライム・ビデオのプライム会員特典で観られます。白黒の古い映画に初めて挑戦する人にもおすすめです。
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